ネガティブな出発点から始まる、くろしお経営のアプローチ(2/4)

個人の尊重を、組織の成長と結び付ける。

別の言い方をすれば、「個人にとっての仕事の各要素を最大化し、ビジョン実現と事業推進の力へ転化する」というくろしお経営のアプローチ。

前回はそれがうまく行った事例も解説しましたが、なかなか成功させるのが難しいのが実情です。

「仕事への対価」という個人と組織の最低限の結びつきですら、ままならない場合も多々あります。

今回はその難しい理由を考えたいと思います。

 

なぜうまくいかないのか?

個人の尊重がままならない

みんな、仕事における「意義」「成長」「安心感」を満たしたい(最大化したい)と考えているのに、なかなかうまく行かない。

その一番の理由は、みんながいること」にあると考えます。

 

 

  • 意見の不一致

組織のメンバーあれば、大枠でその組織ビジョンに反対ということはないでしょう。

 

しかし、各論では組織メンバーには様々な意見があり、全員に具体的な方針や計画を納得してもらうのは至難の業です。

しかも多くの新しいアイデアを求め、多様性のある組織を作ろうとするならば、その難しさは倍増します

 

また、組織全体のビジョン・方針には賛成でも、自分の所属するチーム(会社でいえば、部だったり、課だったり)の方針には納得いかないということもよくあるでしょう。

 

  • 仕事分担の不均衡

同僚に回された仕事はやりがいもあり、成長できそうなのに、自分には人がやりたくない仕事ばかり回される。

と、少なくとも自分は感じてしまうということは多いのではないでしょうか。

 

本人の自己認識、他者認識がずれているということもあるでしょう。

一方、組織全体の人員構成の問題や、上司の仕事の割り振り方に原因があることも多いです。

 

  • 不平等感

多様な働き方を目指せば目指すほど、全員が満足する状況を作るのは難しいです。

 

数年前、資生堂が育児社員への配慮をやめたというニュースが注目を浴び、賛否両論が沸いたことがありました。

育児の必要のない社員の負担が大きくなりすぎるというのが理由でした。

これなどは資生堂が試行錯誤しながら平等な多様性をつくろうとしている努力と、その難しさの表れなのかなと思いました。

 

ちょっと話は逸れますが、東南アジアの国々や中国圏、北米などに比べると日本は特に平等ということを気にする人が多い場所だなという気がします。

平等感を意識するあまり、他のことを犠牲にしすぎているような組織もあるように感じます。

いわゆる悪平等というやつです。

 

いずれのケースも「みんな」の数が多くなればなるほど、「みんな」のバックグラウンドが多様になればなるほど、難しくなる問題です。

「悪い」のはそれを解決できない経営陣だったり、社員一人一人かもしれませんが。

 

アイデア、遂行能力、コミットメントを組織の成長につなげられない

この難しさの大きな要因は、事業環境と戦略の乖離です。

 

そもそも甘い事業環境分析に基づいた戦略立案だったということもあるかもしれません。

 

しかしそれ以上に、事業環境の変化が大きいのがグローバル化の今の世界。

次々に、遠く離れた場所で起こった出来事が、大きな事業環境の変化の波を引き起こしています。

 

このため、一方で力強く戦略・計画を推し進め、一方で事業環境の変化をにらみながら、柔軟に戦略、計画自体を変えていくことが求められています。

ただ、当たり前かもしれませんが、言うは易しです。

 

そして特に事業環境の変化への柔軟性を失うと、途端にメンバーのアイデア、遂行能力、コミットメントを、組織の成長につなげられなくなります。

 

 

  • アイデアの不足

短期であれ、長期であれ、事業環境が変わらないのであれば、主要な情報、アイデアを取ってくる場所と人は同じで良いでしょう。

また、アイデアを混ぜ合わせ具体案にし、意思決定していくのに参加する人やプロセスも固定化できます。

 

しかし、予期せぬ景気変動等で注力マーケットが変われば、そのたびに必要な情報とアイデアの中心になる場所と人は変わります。

元の場所をアイデアの源とすればアイデアは不足し、固定化したプロセスでは具体案への練り上げも不十分になるでしょう。

 

  • 必要人材の不一致

製造業を例にとれば、受注量の変動による人余り、人不足は、イメージがつきやすいと思います。

 

求められる質が変わる場合もあります。

 

例えばジェネラリストとスペシャリストの価値。

新しいサービス・製品を作る必要がある時は、スペシャリストの必要性が高まることが多いでしょう。

一方、安定したビジネスモデルを進めるフェーズの場合は、ジェネラリストの必要性が高まるケースの方が多いかと思います。

 

必要人材の質・量とも、事業環境の変化に大きく影響されます。

 

  • 不適切な見返り

人の心は移ろいやすいもの。

当初より事業の障害が増えれば、コミットメントが落ちてきてしまう人も多いはず。

 

事業環境が厳しくなれば、組織が、当初約束していた報酬が払えなかったり、職場環境に気が回らなくなるということもあるでしょう。

そうすると結果的に、メンバーのコミットメントが落ちてしまうというケースも出てくるはずです。

 

事業環境が良くなったケースですら、見返りが不適切になるケースはあります。

例えば、販売が好調ゆえにマーケター職も営業に駆り出されてしまう。

そのため、本来やりたかったマーケティングの仕事に打ち込めない。

例えたくさんボーナスが出たとしても、本人とっては不適切な見返りということになるかもしれません。

 

これさえあれば

「みんな」がいることも、事業環境の変化も、いずれも大きく解消できるものがあります。

 

時間とお金です。

 

「機が熟す」といった言葉がありますが、時間をかければ意見の不一致の解消は大きく進むでしょう。

お金があれば、不測の事態に備え多くの人手を正社員として雇っておく、少なくとも報酬は不満が出ないように十分に払うということもできます。

 

でも実際は、時間もお金も、「個人の尊重を、組織の成長と結び付ける」ための制約条件になっています。

 

当たり前といえば当たり前。

けれどもお金はすごく意識されているけれども、時間についてはいくらでもあると無意識に感じている組織が少なからずあると感じます。

 

変化が激しい中国や東南アジア等の新興国に身を置くと、特にそのように見えてしまう組織がたくさんあります。

「意見の醸成」を待っている間に、現地の競業企業にビジネスチャンスを持っていかれてしまう企業。

終身雇用の意識のままで社員をマネジメントし、社員の不満への対応が後手に回る企業。

 

海外に進出していく、グローバルに組織を運営する場合は特に、お金と同じぐらい、時間が制約条件となるのを意識する必要があるでしょう。

 

①「みんな」がいること

②事業環境と戦略の乖離

③時間とお金の制約

今日は、「個人の尊重を、組織の成長と結び付けること」を難しくしている大きな3つの要因をまとめました。

 

次のブログではこれら要因を踏まえた上で創った、くろしお経営の課題解決フレームワークを説明します。

 

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