ここまで、
①デジタル革命での技術的「進歩」とは何か?
②その「進歩」で生まれる新ビジネスと、市場へのインパクトは何か?
を自分なりに考えてきました。
今回のブログは、
①②で起こった変化により、「組織の在り方」「働き方」「人材マネジメント」はどう変わるか?
を考えていきたいと思います。
まずは手掛かりとして、前回のブログでまとめた、市場へのインパクトのキーワードを並べてみます;
- 参加者の増加(個人・小企業の参入)
- 権威から、皆の信任へ
- セミカスタマイズ商品(自分向け商品への慣れ)
- 多品種中量生産(自分向け商品への慣れ)
- 世界中の企業とのパートナーシップ競争
- デフォルトプラットフォームへの競争激化
ここから、起こりうる「組織の在り方」「働き方」「人材マネジメント」の変化を考えてみました;
最初の4つは「組織の在り方」について。
グローバルでの中央集権化
- セミカスタマイズ商品(自分向け商品への慣れ)
- デフォルトプラットフォームへの競争激化
ここを目指す企業は、基本は世界中、どの市場でも受け入れられるようなビジネスモデル、商品を作る必要があります。
その意味では、経営企画やR&D等が本社に集中していたほうが組織は動きやすいでしょう。
また、権限の所在やコミュニケーションフローも、本社の強いリーダーシップが発揮できる中央集権&トップダウン型の方が合うケースが多いでしょう。
さらに、こういった企業にとって中央集権化以上に重要なのが、情報の中央集中化です。
あらゆる市場の動きやニーズが本社にすべて入ってくる仕組みが必要です。
しかもそれは、あらゆる市場に拠点があるということでは足りません。
自動的に必要な情報がどんどん入ってくる仕組み、つまり情報記録系プラットフォームを自前で持っている必要があります。
GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)が特別である理由の一つは、過去のグローバル企業と同じように、今後も中央集権化で組織を運営できるところだと、個人的には思います。
多くの企業は権限分散(本社の投資会社化)
しかし、GAFAのように情報記録系プラットフォームを自前で持っている企業はごく少数。
これまで中央集権化で運営していたグローバル企業も含め、別の運営形態を目指すことになると思います。
- 参加者の増加(個人・小企業の参入)
- 多品種中量生産(自分向け商品への慣れ)
に対応できる運営形態です。
自前の情報記録系プラットフォームを持たない代わりに、各市場にいる海外拠点、各業界に密接に関わる事業本部が、しっかりと現地、業界の情報を掴むことが必要。
その上で、個人や地場の小企業の意思決定のスピードに勝つ必要があります。
そのためには、海外拠点、各事業本部の機能の拡大と、権限分散が不可欠です。
各拠点や各事業部がフル機能を持つことは現実的ではないにせよ、製造拠点が設計機能を、販社が商品開発機能を持っていくことなどが、今後必要でしょう。
そうした中、本社の役割は、全市場、全事業の戦略を設定することよりも、どの市場、事業に投資を決めるかということに、軸足を移していくことになるでしょう。
海外拠点が自前のものだけでなく、M&Aで増えていっているということもこの変化を後押しする要因になります。
本社の投資会社化が今まで以上に進むと思います。
逆にもしそうなれなければ、各市場のニーズをしっかり掴める個人や小企業に、大企業が負けていくことも度々出てくるでしょう。
大企業のメリットはサイズではなく、手数の多さ
もう一つ、大企業が勝ち続けるためには、「大企業」の意味を捉えなおす必要があると思います。
マスプロダクションが重要であるときには、スケールというのが「大企業」であることの重点であり、メリットでした。
そのメリットが完全になくなることはないですが、「大企業」のメリットを手数がたくさんあると捉えた方が、多品種中量生産(自分向け商品への慣れ)の時代には合うでしょう。
色々な市場や事業を持ち、各拠点や事業部が、その市場・業界に合致する商品を作っていく。
うまく行けば、それを横展開していく。
このように、たくさん実験できることが、個人や小企業にはない、大企業であることの重要なメリットになっていくと思います。
もちろん、今までもそういう側面があったのでしょうが、日本の大企業は概して小さく失敗することが苦手のように思います。
特にトライアル&エラーの気質が強い新興国の地場企業との競争において。
慎重に考え抜いた上で勝負する日系企業は、意思決定においても、(失敗をすることによる)ラーニングスピードにおいても負けてしまっています。
ですから、「手数の多さ」を大企業のメリットとするには、小さい失敗を許容していくことを身に付けることでもあると思います。
プラットフォームベースのネットワーク化
さて、大企業のことばかり書きましたが、一方で個人や小企業も、デジタル革命によって力を持つ方法が増えたと思います。
- 権威から、皆の信任へ
- 世界中の企業とのパートナーシップ競争
という中、コアな技術や商品ブランドを持ち、「星の数が多い(評価の高い)」個人や小企業は、引く手あまたになるでしょう。
潜在的に協働できる企業、顧客となる企業が増えるわけです。
自然と、強力な企業間ネットワークの中に入っていくことができます。
しかもこのネットワークは、大企業と出資関係がある企業グループとは違い、制限、制約が小さい。
ちょうど、航空アライアンス(one worldやstar allianceなど)をイメージすると近いかもしれません。
質が高ければ大手のアライアンスから引く手あまたになります。
一方でそのアライアンスが大きければ、入りたいという航空会社も増えることでネットワークはさらに広がっていきます。
このネットワークに枠組みがあるとすれば、「共通のプラットフォーム」を持つ企業同士の方が、ネットワーク化されやすいということでしょう。
前回のブログで書いたように、完成品メーカーとサプライヤーが契約し、生産ラインを構築する上では、共通のプラットホームをお互いに使っているかことが重要だからです。
まとめと次回予告
『デジタル革命により、「組織の在り方」「働き方」「人材マネジメント」はどう変わるか?』の前半戦として、まずは「組織の在り方」について今回は書きました。
後半戦は、 「働き方」と「人材マネジメント」に起こる変化について考えてみたいと思います。
おそらく、ここは表裏一体になる部分も大きいです。
次回がこのテーマでの最後になります。
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