3つの時代、4種類のグローバル化(2/2)
時代 III(企業 x 多角市場)
さて、20世紀の終盤からはNISEと呼ばれたシンガポール、香港、台湾、韓国を始め、ASEAN地域等の発展途上国が急激な成長を見せていきます。
21世紀に入れば、BRICs(ブラジル,ロシア,インド,中国)もぐんぐん伸びていきます。
ここが、時代IIと時代IIIの分岐点。
先進国に加え、このような新興国が優良市場となっていきます。
ちなみに、20世紀後半のアメリカ合衆国や西ヨーロッパの企業にとっては、日本こそが新興国。
時代IIIのシグナルはだいぶ早くに鳴っていたと思います。
気を付けなくてはいけないのが、市場が先進国から新興国に移るわけではないということ。
先進国も大きな市場として残りつつ、新興国も重要な市場になっていきます。
そうした中、新興国市場をしっかりと意識した商品作りが必要になっていきます。
時代IIの頃は、先進国向けの商品をマイナーチェンジするだけで、発展途上国の(多くは富裕層向けの)商品として成り立ちました。
その時代においては、圧倒的な品質優位があったから。
ところが新興国でも実力がある企業が増えてきており、その優位差は年々縮まってきている。
その上、富裕層だけでなく、中間層もターゲットにしていく必要がある。
新興国市場のニーズに合致しなければ、先進国市場の商品を横展開するだけでは、新興国市場での成功は難しくなっていくでしょう。
ここが、時代IIIのネゴシエーションの勘所になります。
このような時代IIIの現在、「グローバル化=地理的な隔たりを越えて1つのシステムを広げていくネゴシエーション」は2つの方向性で動いていると考えられます。
2つの方向性、2種類のグローバル化のイメージとしては、<包囲戦>と<各個撃破>でしょうか?
そんな物騒なものではないですが。
<包囲戦>は、すべての市場で当たるビジネスモデル、商品、サービスを創っていくグローバル化。
特に、商品の品質勝負に持ち込むのではなく、商売をする世界統一のプラットフォームを作り上げてしまうのが、現時点では最も勝率が高い。
GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)はすべてこれ。
プラットフォーム上では、多国籍企業も、現地企業も、個人も参加し、競争が繰り広げられます。
しかしプラットフォームを持っているGAFAは、どこからも賃料をもらえることで、品質合戦、価格競争に巻き込まれずに、収益を上げられます。
これら企業は「国際化」のステップを踏まず、一気に「グローバル化」の状況を作り上げています。
むしろ、世界的なプラットフォーム,システムになるためには、最初から「グローバル化」をしていく必要があると言えるでしょう。
ただ、プラットフォームを作るのは、出現した時のGAFAのような凄まじい新規性を持つか、すでに圧倒的な体力があるごく少数の大企業でないと難しい。
多くの企業は、市場ごとのニーズに合致するビジネスモデル,商品,サービスを生み出せるシステム、<各個撃破>のシステムを築いていくことが必要になります。
これがもう一つのグローバル化。
重要なのは、たくさんの市場にただ進出しているという状況ではなく、多くの市場で同時に勝てる<各個撃破>のシステムを創り上げることです。
どこかの拠点で生まれた良いプラクティスをすぐに横展開できるシステム。
ある拠点のAというアイデアを、別の拠点のBというアイデアとすぐに結び付けて、より強い商品やビジネスモデルを作れるシステム。
各拠点が担当市場での最適化を目指しつつ、拠点間の情報交換と協業が常に行われるシステムです。
まとめ
さて、今回のテーマのステップ①として、歴史も踏まえ、くろしお経営流に「グローバル化」を定義してきました。
少し遠回りしたかもしれませんが、強調したかった点は次の通り;
- 時代Iから時代IIIへの変化は、けして「国際化」から「グローバル化」へのステップアップではなく、異なった種類のグローバル化であること
- 各企業の動きを取り上げると、やり方次第では「国際化」を経ずに「グローバル化」に到達できること
- 時代IIIの現在、グローバル化の主体は企業であり、どのような「グローバル化」を選ぶかは、企業自身が選択すべきであること
特に3つ目のポイント。
時代IIのグローバル化の形を当面は続けるという選択肢もあるでしょう。
また、<包囲戦>か<各個撃破>のグローバル化のいずれかを選択するということもあるでしょう。
次回のブログでは、この<包囲戦>と<各個撃破>のグローバル化を深掘りすることで、より選択肢を明確にしていきたいと思います。
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