【併せて考えなきゃシリーズ①】ダイバーシティとコンピテンシー・モデル

個々の施策としては良く見えるのに、他の施策と組み合わせると不合理になってしまう。

人材マネジメントの施策にはこういったものがたくさんあります。

 

特にそれぞれの施策が、別々の部署で主導されていた場合など、意地の張り合いになり、妥協点が中々見い出せないことも。

 

このシリーズでは、コンセプトは魅力的だけれども、導入すると既存施策と不整合が起こりやすいものを題材に取り上げていきたいと思います。

 

1回目は、ダイバーシティとコンピテンシー・モデルの不合理について。

 

 

2種類のダイバーシティ

近年、ダイバーシティという言葉の下、女性や外国人、障碍者など、より多くの人が公平に働けるための、施策や目標を導入している企業が多いと思います。

 

例えば、その施策や目標には、フレックス制やリモートワーク、女性管理職比率や障碍者雇用比率等があります。

いわゆる属性のダイバーシティを推進する施策です。

 

これらダイバーシティ推進の施策は、人手不足の企業にとっては、その不足を解消する意味で、事業上の効果もあります。

 

一方でそもそも人手不足に困っていない企業。

例えば、候補者がいくらでも来るような人気企業。

 

こういった企業でのダイバーシティの事業上の効果は、オピニオン・ダイバーシティと呼ばれ、次のような説明が多いかと;

色々なバックグラウンドの人が集まれば、色々な意見が出され、事業成長につながる新しいアイデアが生まれる

 

まあ、そうかもしれないけれども、効果はあまり実感できないよねという人の方が多いのでは。

 

 

 

 

属性のダイバーシティがオピニオン・ダイバーシティにうまく繋がらないのはなぜか?

 

その理由の一つが、コンピテンシー・モデルではないかと筆者は思っています。

 

 

コンピテンシー・モデル

では、コンピテンシー・モデルは悪者か?

 

諸々判断する前に、まずはコンピテンシー・モデルの概要から。

 

採用や育成においては、当然、それぞれの職種や役割に応じて、求められるスキルや知識、経験があります。

 

でも仕事をする上ではそれだけでなく、「ふさわしい行動特性というものもあるようね」と考え出されたのがコンピテンシーです。

例えば、会計や財務だったら「慎重さ」や「細部へのこだわり」、営業だったら「積極性」だったり「粘り強さ」だったり。

 

各職種や役割に、共通して求める行動特性を整理してリストアップしたのがコンピテンシー・モデル。

 

 

<コンピテンシー・モデルのイメージ/例>

 

 

 

このモデルの用途としては次のようなものが挙げられます;

  • 採用:求める職種・役割に応じた採用の判断基準や質問リスト作成
  • 育成:研修体系を作る上で、どこに力点を置くかの指針
  • 評価:成果だけでなく、求められた行動が取れていたかどうかの判断基準(行動評価基準)

 

これにより、よくありがちなダメなことを、ある程度は防げます;

  • 与太話に終始してしまい、面接官の好みだけで合否を決定してしまう採用面談
  • ちょっと良さそうな研修を集めただけの繋がりのない教育体系
  • 外部環境に大きく左右される成果評価のみによる処遇決定

 

コンピテンシー・モデルも、(ちゃんと運用されれば)中々良い施策だと思いませんか?

 

 

どっちも良さそうな施策なのに

とはいえ、これだけ行動特性も定義されてしまったら、同じような人ばかり集まりそうですよね?

 

「積極的な」会計担当や、「慎重な」営業担当は、時には評価してくれる人もいるかもしれませんが、オフィシャルには評価されない。

そもそも採用されるかどうかも分からないわけですから。

 

属性のダイバーシティがあったとしても、行動特性が似ているなら、オピニオン・ダイバーシティは生まれにくいと思いませんか?

 

 

 

 

反対にオピニオン・ダイバーシティを求めて、あまりにも行動や考え方が違う人たちを集めたらどうなるか?

 

組織の一体感がなくなったり、チームとして仕事が遂行できなくなってしまうかもしれません。

 

 

だから併せて考えよう

では、コンピテンシー・モデルを廃止するのか?

これだけ便利な用途があるのだから、全部廃止するのは乱暴ですよね。

 

じゃあ、属性のダイバーシティだけの施策、オピニオンダイバーシティまで求めないで満足するのか?

 

人手不足でなく、そこまでやってくれる会社は良い会社だと思います。

でもフレックス制やリモートワークでかかる管理コスト、システムのコストのわりに、事業への効果がない。

これでは業績が悪くなったら続けられなくなるかもしれない。

 

結局、両方を成立させるためには、併せて考えるしかありません;

  • オピニオンダイバーシティを阻害しないレベルでの行動特性の規定
  • 組織としての一体感や役割遂行を阻害しないレベルでの行動特性の多様性

 

両立させるような、さじ加減が必要になります。

 

 

 

 

 

さじ加減こそが難しいわけですが。

筆者自身も明確な答えを持ってはいないですが、「その時点での、社員からの意見の吸い上げ力」が、さじ加減の一つの目安となるのかなとは思います。

 

ダイバーシティ云々が出る前から、社員、特に一般社員の意見をうまく吸い上げられていた会社は、おそらくダイバーシティの幅を相当広げてもうまくやっていけるでしょう。

 

いずれにしても、片方の施策だけを考えて推し進めるよりも、両方を同時にしっかり考えていくことが、よりバランスの取れた人材マネジメントに繋がると思います。

 

 

© Kuroshio HR Consulting, Ltd. 2019