ハウツー本みたいなタイトルで恐縮です。
今回のテーマ。
一般的な「(事業の)グローバル化」のイメージでは、これからの組織運営の参考になりにくいと考えたのが出発点。
最大の問題は、世界全体が長い歴史の中で「国際化」のステップを踏んだ上で「グローバル化」が訪れたと捉えられている点。
まず「国際化」で(二国間の)国境を跨ぐというステップを踏む。
その上で、「グローバル化」で(多国間で)国境がないかのような連携・相互依存が起こる。
個々の日系企業のステップはそういうものが多いと思います。
しかし、世界全体の長い歴史では、必ずしもその見方は当てはまらない。
むしろ、時代によって異なった種類の「グローバル化」があったと考えた方が合点がいきます。
その上で、今、これからの「グローバル化」の形をしっかり捉え直すことが、事業、組織運営には参考になると考えます。
その理由を説明するためにも、今回のテーマを次のステップで考えていきます;
①まず、歴史を追いながら、くろしお経営流に「(事業の)グローバル化」を定義します
(3つの時代、4種類のグローバル化)
②次に、くろしお経営流の定義に基づいて、これからのグローバル化を推進するための組織体制を提案します
(<包囲戦>と<各個撃破>のグローバル化)
③その上で、その組織体制が円滑に運営されるための要諦をまとめてみます
(「下剋上」のグローバル経営)
3つの時代、4種類のグローバル化(1/2)
くろしお経営流グローバル化の定義
グローバル化には文化的グローバル化、経済のグローバル化から、リスクのグローバル化まで様々な側面があります。
今回は、事業のグローバル化に限定して話を進めていきたいと思います。
では、まず結論から。
くろしお経営流のグローバル化の定義とは;
地理的な隔たりを越えて1つのシステムを広げていくネゴシエーション
わかりにくくてすみません。
でも、この定義は、いつの時代のグローバル化にも当てはまります。
そのことを時代を追って説明します。
グローバル化を進める事業の主体と、その中で商品の主要な目的地となる市場を軸として考えると、3つの時代、4種類のグローバル化が見えてきます。
時代 I(国 x 先進国市場)
グローバル化を古代から定義する学者もいれば、大航海時代・帝国主義時代から考える学者もいます。
そこの違いは今回のブログではたいして重要ではありません。
とにかく、帝国主義時代までのグローバル化とは「国境を広げる」試みです。
なぜなら、グローバル化を推し進める主体が国家だから。
宗主国は領地を広げるため、非常に暴力的なものも含め、様々なネゴシエーションを通じて、自分たちの(多くは封建制度的)システムに他民族を組み込んでいったことは周知の事実。
また、領地の拡大は、租税や物流によって富と物資を宗主国(≒当時の先進国)の中心地にもたらすことが大きな目的だったはずです。
なお、植民地地域にも、貿易収支の不均衡をなくすための三角貿易、製造のための原料輸入等により、物は入ってきていました。
それでもこの時代は宗主国を富ますのが最終目的だったと理解する方が自然かと思います。
時代 II(企業 x 先進国市場)
第二次世界大戦後、帝国主義時代のように国家があからさまに国境線を広げていくことは難しくなりました。
その中でグローバル化の担い手となったのが、多国籍企業です。
20世紀の多国籍企業のシステムをザクっと言ってしまえば、賃金の安い発展途上国で原料調達、製造を行い、先進国市場に商品を届けるというもの。
それぞれの企業は業界限定ではあるものの、地理的な隔たりを越えたシステムを広げていきます。
日系企業も1960年代に、まずアメリカ合衆国やヨーロッパの市場に打って出ます。
この「国際化」が、日本にとってはエポックメイキングな出来事だったのでしょう。
名だたる日系企業の本を読んでも、この時代にアメリカ合衆国に販売拠点を持った時の苦労話が、中盤の山場というのはよくあります。
だから、今だに日本では「国際化」と「グローバル化」の対比がことさら意識されるのかもしれません。
続いて1980年代に、日本の賃金の上昇とプラザ合意に象徴される円高により、東南アジアを中心とした工場移転が起こります。
ここに、先ほど書いた「賃金の安い発展途上国で原料調達、製造を行い、(日本も含めた)先進国市場に商品を届ける」というシステムが完成します。
重要なのは、このシステムが「国境がないかのような連携・相互依存」ではなく、国境がしっかりあるからこそ成り立つシステムだという点です。
市場となる国と生産地となる国の貧富の格差や、政策、法規制の違いをできる限り利用しているシステムです。
今日は一旦ここまで。
次回のブログでは、今、そして当面の未来も含まれる時代IIIについて考えたいと思います。
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