緊急事態宣言が出た中でも、業種・職種としては在宅勤務できるのに、今まで通り社員を出勤させている会社も少なからずあるようです。
また、在宅勤務の準備が十分にできないまま、社員の安全を考えて在宅勤務に移行した会社も多いでしょう。
そこで、テレワークのインフラがしっかり整備出来てなくても、
- おおよそ問題ないレベルで機密性を守るための技
- 在宅勤務で円滑に業務を進めるための心構え
をリストアップします。
これによって、テレワークのシステムが整っていないことを理由に、在宅勤務に移行できない会社が、週1~2日の出社、できれば出社しないで済むようになれば幸いです。
なお、私はITセキュリティの専門家ではありません;
- 専門領域である組織・人材マネジメントの視点
- Webexのような気軽に使えるテレビ会議システムや、Lineのようなチャットシステムが一般的でない2008年頃から、遠隔地でのコンサルティングプロジェクトをやってきた経験
から記載します。
ITセキュリティの専門家から見れば、もしかしたらそれだけでは、多少リスクがあるものも含まれるかもしれません。
ただ、私自身は少なくとも10年以上、機密漏洩が問題になったことはないため、組み合わせていけば、ある程度の有効性はあると考えています。
【テレワークのインフラが不十分でも機密性を守る技】
-
資料・情報ごとに機密性のランク付けをする
-
資料・情報を2つのメディアに分ける
-
電子ファイルにパスワードを設定する
-
機密漏洩した場合のリスクを家族にしっかり伝える
どれも家で、EメールとPowerPoint, Word, Excelなどが使えれば、なんとかなる方法です。
資料・情報ごとに機密性のランク付けをする
会社で扱われる資料・情報は通常すべて社外秘ですが、それでも機密にしておかなくてはいけないレベルは異なるはずです。
機密性のランクに応じて、本当に高い機密性を保つ必要がある情報・資料のやり取りや相談だけ、週1~2日の出社日に行います。
そして、それ以外の資料・情報についてはメール、チャット、電話を使って在宅で行うというのは可能だと思います。
この場合のランク付けですが、会社トップがすべてを決めるというのでは、いつまでも決まらないでしょう。
会社トップは、方針と、現時点で分かっている範囲での本当に機密にしなければいけない資料・情報を明確にし、後は現場の管理職の裁量に任せるべきだと思います。
「部下の出社は週1~2日以内」というルールと、「機密ランクの高いものだけ出社日にやり取りをする」というルールを示せば、現場はけっこう正しく動きます。
資料・情報を2つのメディアに分ける
「高い機密性にランク」された資料・情報も、ランクを下げる方法はあります。
資料・情報を2つのメディアに分ける方法です。
例えばメール上では、X社、Y部署、Zさんというふうに対象を隠して、状況・問題・解決策等をやり取りします。
一方で、Lineなどのチャット機能を使い、そちらではX社、Y部署、Zさんの実名だけを伝えます。
偶発的に両方の情報が誰かの手に渡り、大きな問題になるというリスクは相当低いかと思います。
PowerPointやWordのテンプレート等に会社のロゴを入れている企業も結構あるかもしれませんが、ドラフトの段階ではロゴを取ってやり取りするといった工夫も必要です。
また、顧客情報リストなども、情報が載っているファイルは顧客にナンバリングをして顧客名は載せず、別のファイルでナンバリングと顧客名が照会できるようにするといった方法もあります。
もちろん、ファイル送付の際には、別々のメールで送付するなどが必要です。
なお、会社で用意できず、プライベートのLine IDや電話番号を使ってもらうしかない場合、社員間での交換を嫌がる社員もいるかもしれません。
その場合は、在宅勤務が終わればお互いブロックしてもらう方針であること、在宅勤務後もプライベートの番号に電話してくることがあれば、会社に報告してもらって良いことを、経営トップから伝えるということも必要かもしれません。
電子ファイルにはパスワードを設定する
すでに多くの企業では、社外宛のファイルにはパスワードをかけることがルール化されていると思います。
ところが、社内コミュニケーションの段階では、PowerPointやExcelのファイルにパスワードをかけていないところも結構あるようです。
簡単にでき、単純なことですが、パスワード設定を徹底することは、情報漏洩を防ぐうえでは有効です。
機密漏洩した場合のリスクを家族にしっかり伝える
ご家庭で仕事をする際、家族に聞かれない・見られないで仕事をするのが難しいことも多々あると思います。
特に社内チャットの仕組みが無かったり、メールに慣れていない管理職・メンバーとのやり取りでは、往々にして電話が増えると思います。
そういう意味では、社員それぞれが家族に、情報漏洩によって会社が重要顧客を失うリスク、自身が処罰されるリスク、それによって家族がどのような影響を受けるかをしっかり話しておくことも大切だと思います。
【円滑に業務を進めるための心構え】
-
在宅勤務に「慣れる」時間が必要なことを理解する
-
オフィスで仕事をするのと同じ状態を求めない
在宅勤務に「慣れる」時間が必要なことを理解する
「在宅勤務だからうまくいかない」と、「在宅勤務に慣れていないからうまくいかない」は大きな違いです。
どんなことでも慣れるまではなかなかうまくいかないものです。
だから最初の1~2週間は、オフィスで仕事をするのと同じ成果が出ないことに対して、恐れない、イライラしないことが重要です。
慣れてくれば、大きな支障が出ないくらいまで成果は戻ります。
余談ですが、海外のクライアントで、在宅勤務にする代わりに日報を出すようにしたら、チーム全体の成果は変わらないのに、作業量が明らかに2~3時間程度のメンバーがけっこういたのを発見したという話をしてくれた方もいました。
オフィスで仕事をするのと同じ状態を求めない
「在宅勤務に慣れる」ということにも通じるのですが、「在宅勤務」における最適な仕事のやり方を上司・部下の間で見つけていくことも重要です。
すでにテレワークを実施している企業の中では、オフィスでの仕事を在宅勤務で再現するために、勤務時間はずっとテレビ会議システムで所属部署のメンバーを繋いでるといったところもあるようです。
また、時間管理システムに大きな投資をしている会社も多いようです。
しかし、オフィスでの仕事の仕方の再現は、管理職の人にとっても、そのメンバーの人々にとってもストレスになるのではと思います。
本当に大切なのはこれまでと同様の成果を出すことであり、
- すぐに相手が反応してくれない中での仕事の割り振り方の工夫(管理職)
- 何度もやり方を聞きにいかなくても良いように、やるべきことを明確にする工夫(メンバー)
です。
職種や管理職・メンバーとの関係性にもよってやり方は様々だと思いますが、オフィスでの仕事のやり方の再現ではない最適な仕事の進め方を、意識して探していただけると良いかと思います。
【まとめ】
個々の企業にとっては、役に立たないアイデアも多々あるかもしれませんが、使えるアイデアは使っていただければ幸いです。
また、完璧なテレワークの仕組みを最初から作ろうとするのではなく、加点方式で使えるアイデアを活用いただき、在宅勤務を推進していただければと思います。
もしよろしければ、こちらのコラムもご覧になってください;
© Kuroshio HR Consulting, Ltd. 2020