事業がぐんぐん伸びる、グローバル化の捉え方(第6回)

下剋上のグローバル経営(2/4)

 

海外拠点メンバーへの「下剋上」の効果

前回は、組織としての海外拠点間の「下剋上」経営について書きました。

今日のブログでは、「海外拠点のメンバーにとって、「下剋上」のようなマネジメントの仕組みが良いのかどうか?」を考えたいと思います。

 

結論から。

仕事に意義や成長を求めるメンバーが多いのであれば、良いと私は考えます

 

次の図は、くろしお経営のアプローチの一部で、個人にとっての仕事を構成する3つの要素をまとめたもの;

 

 

 

 

3要素のうちどれをどれくらい与えられるか、与えたいかは、それぞれの組織の力と考え方次第。

いずれにしても3要素総体としての充足度をメンバー全体で上げられれば、それは大きな事業の推進力となります。

 

「下剋上」のマネジメントは、それぞれの海外拠点にどのような付加価値を持つべきか考えさせ、それを目指すように仕向けます。

ある種、海外拠点に彼ら・彼女らのビジョン、ストーリーを与えることになります。

 

筆者自身はずっといわゆる外資系企業で働いてきました。

また、コンサルタントとして関わったグレーターチャイナでの会社は、日系企業を中心とした、その国においては外資系企業の子会社です。

 

そこで感じたのは、遠く離れた本社のストーリーを、海外拠点のメンバーが自分自身のストーリーとして感じるのは難しいということです。

 

本社に続く、準主役ぐらいの拠点は本社のストーリーだけでも悪い気はしないでしょう。

おそらく80~90年代の日本にある(主に欧米系の)外資企業はその立場にあったと思います。

 

しかし、端役、わき役に置かれている、追いやられてしまったら、やる気が出てこないメンバーも多いでしょう。

ましてや数値目標しか与えられない場合、ちっとも面白くないストーリーです。

 

大きな枠組みは本社のストーリーであって良いわけです。

ただ、その中でしっかりと各海外拠点のビジョン、ストーリーを作り上げてもらう。

どうやったらその拠点独自の付加価値を出せるのか、考えてもらうわけです。

 

しかもそのビジョン、ストーリー作りや実現にしっかりと現地のメンバーに関わってもらい、納得してもらう。

こうすることで、海外拠点のメンバーは仕事により強く意義を感じ、またそのストーリー実現に向け、成長するのではないかと考えます。

 

 

 

 

中国のような発展途上国ではよく、人々は報酬ばかり気にして、高いところにすぐに転職してしまうという声を聞きます。

 

当然、ある程度の競争力のある処遇も重要です。

でも逆に各組織は、報酬以外にメンバーに惹きつけるビジョンやストーリーを持っているのか振り返ってみることも必要なのではと思います。

 

 

結局どっちが楽しいか?

安定感を求めるメンバーが多いのであれば、その人たちにとっては「下剋上」は迷惑。

大変さは同じでも、毎年同じような数値目標を与えられて、ルーチンをやっていく「競争」のほうが難しさは低いかもしれない。

 

ただ、仕事に意義や成長を求める人々、そのようなキャリアステージにいる人たちにとっては、難しいけれども、おそらく「下剋上」の方が楽しい。

 

それは海外拠点全体にとってもそうだと思います。

 

今までは本社の指示を忠実に実行する海外子会社。

 

それを、本社も海外拠点も、「独立した現地企業」として見方を変える。

「独立した現地企業」だからこそ、自ら成長へのストーリーを考え、実践していく必要がある。

本社というスポンサーにアピールしていく必要もある。

 

ただ、本当の「独立した現地企業」は資金繰りを考えたり、出資者を探し続けなければいけない。

それに比べ、最初から本社という大きなスポンサーがいる「独立した現地企業」である海外拠点は、はるかにアドバンテージが大きい。

 

「下剋上」の仕組みは、難しいことを求められるのは事実ですが、このように捉えれば、海外拠点が活性化するイメージが沸いてきませんか?

 

さて、ここまで書くと、じゃあグローバルグループとしての連携やまとまりはどうなるんだという話は当然出てくると思います。

次回のブログではこの点について、本社機能は拡大すべきだが、本社は縮小すべきということも含めて、グローバルグループとしての連携について考えたいと思います。

事業がぐんぐん伸びる、グローバル化の捉え方(第7回)

 

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